8月19日

大雨に降られたので、喫茶店に入った。

今日は渋谷で人に会った後に眼鏡を買って、浴衣姿に囲まれる事なくさっさと家に帰るはずだったが、予定が大幅に狂った。ぜんぶあの大雨のせいだし、夏のせいだ。もっといえば、クリープハイプのせいかもしれない。それでもダメなら僕はもう、君のせいにしてもいいか聞いてしまいそうだ。とにかく、さっきも喫茶店にいたのにまた喫茶店に入らないといけなくなったのは、ぜんぶ雨のせいだった。

眼鏡は買えた。本当は、ポムポムプリンのデザインフレームを買う予定で店に行ったが、店長さんらしき気さくな関西人の男性にうまく丸め込まれ、結局全然違うタイプの眼鏡を買った。家に着いてから「これは顔が整ってる人しか掛けちゃいけないやつだな」と気付いたので、今日からは積極的に顔が整ってる人のフリをして生活していくこととする。仕方がないのだ、だって、眼鏡が。眼鏡がいけない。ぜんぶ眼鏡のせいだ。

眼鏡屋の店長さんはとても良い人だった。帰り際「あ、やっぱりいいですね、それ。」と言って僕のことを送り出してくれた。次に、また眼鏡やサングラスを買う機会があったとしても、ここで買いたいと思う。何の気なしに話していたがすごく会話の調子が合う人だった。ああいう人となら、飲み屋で会っても気軽に楽しく話せるのかもしれない。

例の大雨のせいで入ることを余儀なくされた喫茶店では、甘いタバコを吸う女の人が自分の席の隣に座り、ずっと動画を見ていた。

iPhoneを横にしていたのが見えただけなので、本当は他の事をしていたのかもしれないけど、たぶん映画か英語の教則DVDあたりを見ていた気がする。風貌とWi-Fi環境から察するに、たぶんアメトークとかではないと思うのだ。僕は、手持ちの本をずっと読み進めた。甘いタバコの臭いは、そんなに気にならなかった。

帰りの電車の中で、カップルらしき二人組の男が女性に対して「それは憂鬱に殺されちゃうねえ」みたいな相槌をしていた。具体的にはそこしか聞き取れなかったが、僕はそれがなんだかすごく嫌な感じだなと思った。退屈も憂鬱も、人なんか殺さないし。自分を殺すのはいつだって自分か、もしくは全く関係ない通りすがりの誰かなはずなのに。

ふと今、17時台からなにひとつモノを口にしていなかったことに気付く。お腹、空いてきた。気付かなきゃよかった。怪我も気付かなきゃ痛くないし、心の傷も事を知らないうちは抉れたりしない。空腹も、それとおんなじだ。気付かなきゃよかった。

こんな後悔、初めてじゃないはずなのに。

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